私たち弁護士は,主に金銭,時間,労力の面から分析します。
弁護士は,法律を使った解決案を提示する職業です。
法律による解決案は,基本的に,金銭,時間,労力によって評価し,またこれらによって表現されることがほとんどです。
私たち弁護士は,紛争を,金銭,時間,労力に変換してイメージしやすいかたちで分析して,これを提示することで,あなたの紛争解決の基準を可視化します。
そうすることは,みなさんが本件紛争の最終的な解決方法を選択する際に必ずお役に断つものと信じています。
なお,金銭の話が出たので,申し上げます。和解金,解決金などについては遠慮なさらずお話下さい。金銭を要求することが賤しいとか下品であるように思われている方もいらっしゃいますが,我々弁護士は原則として多くのことを金銭で評価し換算します。
紛争解決に当たり金銭を要求する場合があることは当然のことですし,遠慮すると,後で後悔することもあります。私たちは,紛争の経験上,あまりに不当な金銭要求をアドバイスしたりしませんので,ご遠慮なさらずお話下さい。


最終的に,結論を決めるのはあなたです。
これはあなたの紛争なのですから。
民事訴訟は,裁判官の判断をもらう判決手続で終わりますが,訴訟中も裁判官を介して,相手方と話し合いをするのが通常です。
もし,話し合いで双方譲歩して紛争解決の合意に至った場合,訴訟は,『訴えの取下げ』又は『和解(わかい)』というかたちで終結します。実際には,民事訴訟の大判は,このような和解のかたちで終結します。
さて,判決を得るにせよ,訴えの取下げ又は和解をするにせよ,これは,紛争解決の重要局面ですから,弁護士が勝手に判断することはできません。
私たち弁護士は,判決にするか,譲歩して和解にするか,を判断するための材料は提供します。
しかし,結論を出すことはできません。
譲歩せずにあくまで判決をもらうか,それとも多少の譲歩をしても和解をするかの結論は,最後はあなた自身が決めなくてはなりません。
このように,本来,依頼者であるあなたしか意思決定できない領域があります。 その際,私たちは,必ず,あなたの判断を求めます。
最初は,なかなか判断ができないでしょう。
その場合には,素直にわからない旨お話下さい。私たちは,さらなる判断の材料を提供し,あなたが十分な情報をもった上であなたが判断されるのを待ちます。
お断りすることもあります。
法律的に解決が不能であったり,また弁護士が介入することによっても解決が望めないと思われる場合には,はっきりと無理であることを申し上げます。
依頼者のみなさまへ
-民事訴訟の留意点と私たち弁護士からのお願い-
弁護士 松 下 孝 広
はじめに
私たち弁護士から,依頼者のみなさまに,民事訴訟に関するいくつかの留意点とお願いがあります。
これらのお願いは,よりよい紛争解決のために必要なことですので,是非ともお読みください。
ご協力をお願いいたします。
ご自身で,無理だと思ったとしても決めつけないで,
まずは,私たち弁護士にご相談下さい。
みなさんとは,もうすでに当事務所へご相談をしており,紛争解決の方針などが決まっているかもしれません。しかし,紛争は発展する場合もありますし,またさまざまな新たな問題が生じる場合もあります。
そのようなときには,ご自身で無理だろうと思ったり,弁護士に話すべき問題だろうかなどと相談をためらったりせず,私たち弁護士にご相談下さい。
なかには実現困難なこともあるかも知れません。
また,そもそも弁護士が解決できない問題かも知れません。
その場合には,私たちはその旨はっきり申し上げます。
しかし,それでもひょっとしたら解決の糸口だけでも発見できるかも知れません。
ご相談がなければ,糸口さえ見つかりません。
私たちに何もご相談されずに,心の内に押さえ込んでおくことは,モヤモヤとしたものを残し,精神的にも,よくありません。できることであれば,前へすすみ,できないことでも,はっきりわかることで心の整理ができるはずです。
まずはご相談下さい。私たちは,みなさんの紛争解決を支援します。

あなたは,とても重要な情報を手にしているのです。 問題を解決するには,その情報を私にも知らせていただかなくてはなりません。
私たち弁護士は,法律の専門家ですから,法律のアドバイスをすることはできます。
しかし,法律は,事実が判明して初めて力を発揮するのです。
事実がわかって,初めて使える法律もわかるのです。
事実を把握しなければ,法律を使った適切な紛争の解決は到底実現しません。
私たちは,あなたからあらゆる事実を教えてもらえなければ,全体を見渡して,適切な法律を使うことはできません。
事実をご存じなのは,あなたです。
あなたは事実をすべてあきらかにし,私たち弁護士はそれに法律をあてはめることによって,「協働」して,紛争を解決するのです。

弁護士には,依頼者の秘密を護る守秘義務があります。
ですから,有利な事実も不利な事実も,安心して,私たち弁護士にお伝え下さい。
どんな事情があっても,その中で最善を尽くします。
私たちは,たとえ,不利な事実が存在しても,それを勘案して,最善の選択肢を検討します。
一般常識からみて,おかしいと思えることでも,視点を変えてみれば,おかしくないということはたくさんあります。私たちは,そういったさまざまな視点で事実に光をあててみることが職務です。
私たちは,事実をおはなしいただければ,異なった視点から検討することができますが,教えていただかなければ,何もできません。ですから,お独りで,有利不利を考えず,まずは私たちにお話下さい。

不利益な事実も含めあらゆる事実を,予め検討する必要があります。
私たちは,豊富な紛争解決経験に照らして,与えられた事実から,紛争解決の方法としてどれが最善か,さまざまな可能性のある方法を検討していきます。
有利な事実をどう活かすか,不利な事実をどのようにフォローするか。
また,誤解を恐れず申し上げれば,裁判は,証拠によって,裁判官を説得するゲームです。
最終的に,判断を下すのは裁判官です。裁判官は,証拠に基づいて事実を認定し,その確定した事実に法律を適用して,紛争解決の方法を判断します。
ですから,裁判では,証拠に基づいて事実の存否に関する有利な事実認定をしてもらうことが1つの重要な目標となります。
では,有利な事実認定をもらうには,有利な事情ばかりを裁判官に見せれば良いのか?というとそう簡単ではありません。
紛争は相手方がいます。相手方は,あなたと違った視点で,また,違った事実を把握しているのです。
あなたが自己に不利な事実を隠したり,嘘をついていた場合,もし,相手方がそのことに気付いて,それを暴いてしまえば,あなたに対する裁判官からの信頼は低下します。
ですから,たとえ不利益な事実であっても,時には,それを自ら出さなくてはならないし,仮に,裁判官に提示しなくても,そのことをも予め検討して考慮に入れた上で,他の事実を提示する必要があるのです。
真に裁判官を説得するためにには,有利な事実,不利な事実あらゆる事実を見据えて対処しなくてはならなのです。
恥ずかしい,と思わない。
ご自分のミスや誤りの話などを話すのは恥ずかしい,と思われるのは普通のことです。また,話の性質上話しにくいことも多くあります。
しかし,現在あなたの人生を左右するかも知れない重要な紛争が生じているのですから,勇気を持ってお話下さい。
また,相談中など,わからないことは,聞くのが恥ずかしいなどと考えずにどんどんお聞き下さい。私たち弁護士も法律には詳しいですが,それ以外のことについては,みなさんから教えを請うことはいっぱいあります。わからないことは恥ずかしいことではありません。
耳の痛い話をする場合もあります。
しつこく聞き取りをすることもあります。
私たち弁護士は,あらゆる情報をあなたから入手し紛争解決の方法を検討します。そうすることで,あなたにとって,より適切な紛争解決方法を選択できます。
ですから,私たちは,時には,あなたにとって不利益だと思われることも,しつこく聞き出そうとしたりします。
また,不当なことは不当だとはっきり指摘したり,あなたの意見に対して否定することもあろうかと思います。
あなたにとっては,いやな話だと感じられることもあるかも知れません。
しかし,それは,紛争解決へ向けて通らなくてはいけない道であるとご理解いただきたく思います。また,同じ質問を何度もするかも知れません。しかし,それは,正確な情報に基づいて判断したいということの現れであるとご理解いただきたく思います。
弁護士任せはダメ。
あなたの事件ですから,最後はあなた自身が解決しなくては,本当の納得は得られません。弁護士に法律知識を利用しながら,最後はあなたが自分で判断し解決したということが,真に納得のいく解決なのです。
弁護士にすべてお任せ,という他人事のような態度では,あなたの気持ちは何時までも整理されないと思います。また,弁護士任せだと,後でやはり不満だっとという気持ちになることもあり,双方にとって不幸なことになりかねません。

紛争から学ぶこともある。
あなたは,紛争に巻き込まれ,思い悩まれていると思います。大変なストレスを抱えておられるでしょう。
しかし,紛争が発生した以上は,できるだけ傷を大きくせずに,将来へ向かって気持ちを切り替えて行くために紛争を解決するしかありません。
私たち弁護士は,紛争状態におられるあなたが,将来に向かい,前向きに進んで行かれることを応援したいと考えています。そのために,まず,目の前にある紛争を解決し,みなさんが抱える問題を取り除くお手伝いをいたします。
私たち弁護士は,紛争解決を協働することで,みなさんから学ぶことが多くあります。 また,みなさんも,大きな問題を乗り越えたこと,乗り越えようと努力したこと自体がすばらしいことで,得られるものがあると思います。

気持ちの整理はご自身でなされなくてはなりません
紛争当事者がいがみ合うのは当然のことです。あなたは,憤りや,相手を許せない気持ちであったり,憎いなどの気持ちをもっているかも知れません。
それは,人として自然なことで,そのような気持ちを抑える必要はありません。
しかし,そのような気持ちの問題は私たち弁護士や紛争解決の過程を経て,ご自身で解決しなくてはならない問題です。
私たち弁護士は,カウンセラーと異なり,みなさんの気持ちおさめる能力はありません。確かに,私たち弁護士は,紛争解決のお手伝いをすることで,みなさんの気持ちの問題を解決する場合があります。
しかし,それは,紛争解決を経験することで,みなさん自身が成長し,みなさんが自身で憤りや憎しみと折り合いをつけて解決したのです。
