| 離婚に際して,結婚時の氏(苗字)を名乗る申立をしたが変更したい。 |
| 質問 |
私は,3年前に離婚したのですが、離婚の当時は,子どもが小学3年生だったので,子供のことを考えて,婚姻中の氏を称する届出をしました。
しかし,その子どもは,引っ越しを経て今年の春に中学校に入学するので、これを機に婚姻前の実方の氏に変更したいと考えています。どのような手続きをとればよいのでしょうか。また,許可されるのでしょうか。
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回答概要
氏の変更は家庭裁判所に申し立てることによるすることが可能です。
しかし,どんな場合でも認められるかというとそうではありません。
家庭裁判所は、あなたの申立に基づいて,離婚の際に婚氏続称の届出をした事情及び実方の氏を使用できないことによる社会生活上の支障の有無等について調査・審理して、氏の変更に関する法律である戸籍法107条1項に規定する「やむを得ない事由」が認められる,と判断すれば、実方への氏の変更を許可してくれます。
※氏=いわゆる苗字です。鈴木一郎なら「鈴木」の部分
※婚氏=結婚後の苗字のこと
※復氏=離婚に伴い結婚前の苗字に戻ること。
詳しい解説
第1 氏の変更の「やむを得ない事由」の許可基準
1 一般論としては,「やむを得ない事由」の概念について、その時代や社会の一般社会通念を基にして、その「氏を継続することが社会生活上著しい支障を来す場合をいう」と解されています。
2 しかしこれでも抽象的ですよね。最終的には,家庭裁判所が「やむを得ない事由」に該当するのかを,個別の事案ごとにすることになりますが、大体次の3つの場合に認められるとしています。
(1)一般的には著しく珍奇又は難読・難書で実生活に支障のあるもの
(2)外国人の姓と紛らわしいもの
(3)その氏の継続を強制することが社会観念上甚だしく不当と認められる場合
2 氏の変更の「やむを得ない事由」に該当するとされた事例
(1)珍奇・難解とされた事例
苗字に氏に猿という文字がある場合において,猿という時を冠すると一般的に嘲笑、軽蔑の対象となって本人や子の人格形成に悪影響を及ぼし、社会生活上客観的に不利益であるとして氏の変更を許可した事案があります(広島家裁審判昭和35年6月15日)
(2)通姓の永年使用を理由に認められた事例
内縁の妻が20数年間事実上,嫁ぎ先の氏を称し、夫の死亡後も嫁ぎ先で生活し,家事一切を処理し、祖先の祭祀を主宰してきた等の事情があれば氏の変更を許可すべきやむを得ない事由がある場合に該当するとして,内縁の夫の氏への変更を許可した事例(大阪高裁決定昭和23年10月14日)
(3)離婚に伴う氏の変更
(ア) 復氏した後に,婚姻中の氏への変更をした事例
■事案
離婚によりいったん復氏した。しかし,社会生活上の上ではずっと婚氏を通称として使用してきた人が,戸籍上も婚氏にしたいと氏変更許可を求めた事案。
■名古屋高裁金沢支部決定昭和54年5月17日
戸籍上氏は通氏と異なりその使用が強制されていたのであるから、その永年使用による実績は通氏の場合以上に尊重されなければならず、婚姻期間が長ければ長い程復氏した後にその氏を婚氏に変更することの正当性は強まる。本件離婚は婚氏の継続使用に関する民法767条の改正以前にされたものではあるが、改正の基盤は当時既に存していたというべきであり、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」の存否を考えるに当たっては、改氏一般の場合に比して基準をやや緩やかに解するのが相当である,としました。(名古屋高金沢支決昭54・5・17)
(イ) 婚氏継続届出をした後に,婚姻前の氏への変更した事例
東京高裁決定平成15年8月8日の事例
■事案
同一の男性と結婚と離婚を繰り返し,過去3回離婚した女性が、1回目の離婚のときに,婚氏(結婚後の姓名乗ること)継続を選択していたため、2度目以降の離婚に際して婚姻前の生来の氏に復することができなくなってしまった(例えば,もともと鈴木だったが,結婚して佐藤になり,離婚したときに佐藤を選択した。そして,また同じ夫佐藤と結婚したが,また離婚した場合,結婚前の氏は佐藤であるため変更できない)。
そこで,この女性は,生来の氏への変更の許可を求めた。
家裁では却下(不許可)となった。
■東京高裁の判断
東京高裁は,婚姻前の氏と同じ呼称に変更する場合に準じて、氏の変更の申立てが窓意的なものであるとか、その変更により社会的弊害を生じるなどの特段の事情がない限り、氏の変更を許可するのが相当であるとした上、本件ではそのような事情は認められず、戸籍法107条1項所定のやむを得ない事由があるものと認めることができるとして、申立てを却下した原審判を取り消し、生来の氏への変更を許可した事例があります。(東京高裁決定平成15年8月8日)
(ウ)婚氏継続届出をした後に,婚姻前の氏への変更した事例
東京高裁決定平成2年4月4日
■事案
離婚の際に婚氏を続称することとした者からの婚姻前の氏への変更の申立てをしたが,却下された。
■東京高裁の判断
審判に対する即時抗告事件について、婚氏が社会的に定着する前の申立てであればそれが懇意的なものではなく、かつ、その変更により社会的弊害が生ずるおそれがない限り、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」の存否について一般的な基準よりもある程度緩和して判断し得るとして、原審判を取り消して申立てを認容しました。
(4) その他
婚姻により自己の氏を称することとした妻が、婚姻中に呼称上の氏を夫の氏に変更し、離婚後再び変更前の氏に戻すよう申し立てた事案について、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があるとして、申立てを許可した事例(宇都宮家裁審判平成7年9月22日)があります。
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