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依頼者のみなさまへお願い
 お互い離婚は合意していますが,子どもの親権だけについて争っています。親権を自分にとる方法がありますか。
 
回答の概要

 協議による離婚届が受理されるには,親権者の確定が必要です。離婚届にも書く欄があります。(民765条1項,戸76条1号)。
 離婚について合意したけれども,親権について合意に至らないことは多いです。 この場合,家庭裁判所に,夫婦関係調整の調停の申立て(家審17条)をします。 
 調停でも,親権者についての合意が得られないときには,離婚のみの調停を成立させ,審判で親権者を父母のどちらにするか結論が出されます(民819条1項・5項,家審9条1項乙類7号)。
 また,離婚調停を不成立として終了させた上で,家庭裁判所に離婚の訴えを提起する方法があります(人訴2条)。この離婚訴訟において,裁判所は判決で,父母のどちらかが親権者と決めます。(民819条2項)。
 なお,離婚訴訟を提起するためには,先に離婚調停が行われなければなりません(家審18条)。
 
 親権者を自分にとるためには,「子の利益,子の福祉のために」,自分が相手方より,親権者として適格であるといえる必要があります。
 
 審判の場合には,家庭裁判所調査官が,父母のどちらが適格者であるかについて,専門的知識をもって調査が行われ,家庭裁判所の審判官(裁判官)が判断します。 
 離婚訴訟の場合にも,家庭裁判所調査官の調査が行われ家庭裁判所の裁判官が判断します(人訴32条・33条・34条)。
 
 父母どちらが,親権者として適格者であるかを判断する基準については,解説の基準を参照してください。
 
 親権はあくまで,お子さんの利益の観点から決められますので,これをすれば親権をとれるという切り札的な手段はありません。
 なお,親権者指定の実態は,母親をしているすることが多いとされています。これは,別居時に子を看護養育しているのが母親であることが多いからと思われます。
 

詳しい解説

1 はじめに

 離婚に際して,親権についてのみ争いがある場合には,紛争の根底にもっと別の原因があることが多いです。例えば,そもそも離婚したくないが,親権について争えば,離婚意思を翻してくれるだろうとの思惑があったり,離婚給付についての条件闘争だったり,夫婦間の意地の張り合いだったりします。 

 ただでさえ,離婚そのものが,お子さんにとっては重大な負担ですが,離婚する手続きも長引き,両親がいがみ合うことは,より強い負担となることもあるでしょう。お子さんは,親の様子を敏感に感じ取っているのです。

 離婚が避けられないとしても,親権の争いが,さらに子に対する負担を増大しないようにするためには,早期に父母のいずれかに決せられることが望まれます。

 別居中の夫婦が,親権の争いのために,子の奪い合いを繰り返すことは,子の利益,子の「福祉」に決して沿うことではありません。日々成長する子どもとっては,毎日の些細なことが成長にとって重要です。親権問題の早期解決,ひいては離婚問題の早期解決はお子さんのために,何よりも重要です。

 児童虐待の場合でないならば,親権者とならない親と子との問に面接交渉の機会を認め,面接交渉のルールに子が馴染む下地を作って,離婚を成立させることが望ましいことです。

 また,これは離婚の円滑な進行に向けてかなり有効な方法です。先程,親権の争いは,根底に別の理由があるといいましたが,逆に真に親権を望む場合は,お子さんの成長をみたいからです。そこで,成長過程を見せることで安心しますし,こちらは,離婚手続きを誠実に行うというのだという姿勢を相手に理解させることもできます。


2 親権者指定の抽象的基準

 親権者を父母のいずれかに指定する場合の基準について,民法には規定がありません。 

 離婚の際に,いったん当事者間で決めた場合または審判や判決で指定された場合に,その後に親権者の変更をするときについては,「子の利益のため必要があると認めるとき」(民819条6項)と要件が規定されているのみです。

 しかし,離婚のときに親権を一方の親に指定する場合にも,子の利益,子の福祉のためには父母のどちらが親権者として適格者であるかを決するのですから,親権者指定の場合と親権者変更の場合とで,父母のいずれが親権者として適格者かを決する基準が異なるはずはありません。そこで,この規定は,当然,親権決定の基準として用いることができるでしょう。
 もっとも,これ自体まだ抽象的な基準にとどまります。


3 親権者指定の具体的基準

  家庭裁判所の実務では,次のような基準を考慮して,お子さんがどちらで養育されることが望ましいかを検討するとされています。

 @乳幼児における母性の優先
 A継繚性の原則 
 B子の意思 
 C養育環境の比較 
 D兄弟姉妹不分離 
 E面接交渉の許容性

 上記の基準を考慮して,親権者を父母のどちらかに決するか,家庭裁判所が判断します。

 継続性の原則とは,簡単に言えば,現状維持です。お子さんにとって,学校が変わるとか生活環境が変化することは負担となります。そこで,できるだけ,現状を継続させるのが好ましいと一般的にいえるのです。ここから,現時点で,お子さんがどちらにいるかが重要となってきます。現実には,今現在,お子さんはどちらかが監護しており,そこから学校などに通って,すでにそこでの生活が築かれつつあるわけです。この現状を変更することには基本的に消極的になさざるを得ないでしょう。その現状を変更しても,なお,お子さんの利益になるといえる環境があるかどうかが問題となってくるように思います。
 
 家庭裁判所は,上記のような原則・基準に基づき一定の判断を行い,これに基づいて,当事者の調停や訴訟に関与し,当事者に働きかけ,当事者の調停での自主的解決に向け努力がなされます。
 
 しかし,自主的解決が不可能な場合には,家庭裁判所が,離婚の際の親権者の指定を行います。
 
 父母の客観的条件が括抗し,優劣つけがたいときには,最終的には,子の意思が尊重されるといわざるを得ません。どちらを選ぶかというような判断をお子さんに求めることは,大変な心理的負担を与えることにもなりますがやむを得ません。
 
 人事訴訟法,家事審判規則は,子が満15歳以上のときには,子の陳述聴取義務が規定されています(人訴32条4項,家審規54条・70条)。なお,子が15歳未満の場合でも子の意思を考慮すべき年齢であれば,子の意思を聴取すべきものと思われます。
 
 子が表明した意思は,絶対的なものではなく,どのように評価するかは,裁判所の判断に任されますが,この意思を尊重する判断がなされることが多いでしょう。
 
 
4 手続について

(1) 調停では,親権は最終的には話し合いで決まります。
 審判となった場合には,裁判所が親権の分配を決定します。
 離婚訴訟の場合は,親権の指定などは,判決で離婚の判断と一緒に判断されます。このような離婚訴訟に伴い,一緒に判断される一定の事項を付帯処分といいます。
 
(2) 家庭裁判所は,上記附帯処分及び親権者の指定に際して「事実の調査」に関する規定を設けており(人訴33条・34条・35条),家庭裁判所調査官等の専門家の補助が得られるようになっています。


5 家裁調査官の調査
  
 家庭裁判所調査官の調査は,家庭裁判所での聞き取りや面談,家庭訪問,幼稚園など学校の訪問等によって,による夫婦,子,その他の関係者(夫婦の両親など)からの面接による聞き取り調査や,心理テスト等を行い,親権に関する事実の調査を行います。
  
 家庭裁判所調査官が調査する事項として次のようなものがあります。
(1)当事者の状況に関するもの
 @ 生活歴,学歴,職歴等 
 A 心身の状況,生活態度,病歴,健康状態等 
 B 子に対する態度,感情−監護養育の実績,子との接触の状況,教育的関心及び配慮等
 C 家庭状況一家族の氏名,年齢,続柄,職業(学籍),健康状態,事件 本人に対する感情等,家庭の雰囲気,住居の状況等 
 D 経済状況−資産,負債,収入,支出,家計の状況等 無職者の場合には,その理由及び今後の稼動可能性
(2)事件本人(未成年者)の状況に関するもの 
 @ 生育歴,年齢,出世時の状況,現在に至るまでの監護状況等
 A 生活状況,家庭,学校,職場等における状況
 E 心身の状況,性格,生活態度,精神の発達状態,病歴,現在の健康状態,身体の発育状態
 F父母に対する感情,態度,父母に対する期待,信顔,愛情,不満,反発等

 家庭裁判所調査官は,上記のような事項を調査し,それを報告書として家庭裁判所の裁判官に提出します。家庭裁判所は,この調査結果を考慮して,親権をどちらに認めるべきかを検討します。
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