
| 養育費の額って決まっているのですか。 家庭裁判所の判断を仰ごうと思っていますが,その際の養育費の算定基準を教えてください。 |
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| 回答 民法は,養育費算定の異体的な方法,基準について何ら規定をしていません。従って,決まった額を支払わなければならないということはありません。 しかし養育費算定表により,権利者・義務者の収入,子どもの年令等からある程度の枠が算定されています。 詳しい解説 1 これまでの算定方式 家庭裁判所では,昭和40年頃までは過去実費方式を用いて養育費を決定する方法が支配的でした。この方式ではこの必要生活費と父母の収入と支出を証拠によって認定し,諸般の事情を勘案して裁判官が適宜分担金額を決定しますが,具体的事案に応じた妥当な金額が算定できるという長所がある一方,裁判官の裁量により金額が算定されることから個々の裁判官の価値観で金額が異なり客観性合理性を欠く短所もありました。 そこで,近時は次のような方式が考えられています。すなわち,@標準生計方式(総理府統計局の家計調査,人事院又は地方公共団体で実施している標準生活費の調査結果等)による標準的な平均的消費支出を参考にしてこの生活費を算定する方式です。A生活保護基準方式では,生活保護基準額によって子の生活費を算定する方式です。B労働科学研究所方式(労研方式)では,財団法人労働科学研究所が昭和27年に実施した調査結果を基に独自に算出した消費単位当たりの最低生活費を利用してこの生活費を認定します。 家庭裁判所ではこれらの方式をそのまま採用するのではなく,組み合わせる等工夫をこらし妥当な金額を模索していました。 2 養育費算定表 平成15年に,東京大阪の裁判の研究に基づく新たな算定方式による算定表が発表されました(判例タイムス社刊「判例タイムス1111号」)。 これは,多くの実務家の参考とされており,家裁の裁判官はもとより,調停委員も利用しています。 (養育費算定表は→こちらPDF) (1)基本的な考え方 ここで紹介する養育費算定表は,「生活保持義務」として適正妥当な金額を求めることを目的としているとされています。 特に,義務者・権利者双方の実際の収入金額を基礎とし,子が義務者と同居していると仮定し,子のために費消されていたはずの生活費がいくらであるのかを計算し,これを義務者・権利者の収入の割合で義務者が払うべき養育費の額を定めるというものです。 特徴として実際の生活形態とは異なり,収入のより多い親と子が同居している状態を仮定し,この生活費を計算するという考え方が採用されています。 (2)算定表の使用方法−総収入の認定 算定表を使用するためには,次の方法によって,権利者・義務者双方の総収入を認定する必要があります(平成15年7月25日調停時報155号の解説参照)。 (a)給与所得者の場合 源泉徴収票の「支払金額」が総収入に当たります。給与明細書による場合には,それが給与の月額であり,歩合給の場合には,その変動が大きく,賞与・一時金が含まれていないことに留意する必要があります。 (b)自営業者の場合 確定申告書の「課税される所得金額」が総収入に当たり,課税標準を計算する上での収入金額(売上金額)が養育費算定の総収入となるのではないことに注意する必要があります。 (C)不明の場合 当事者が資料の提出をしない場合や提出資料の信頼性が乏しい場合には厚生労働省が発表している賃金センサス等を利用して適宜推計することになります。 賃金センサスで推計した場合には,養育費の算定に関する限り,給与所得者として取り扱うことになるとされています。 権利者が十分稼動できる環境にあるのに稼動していない場合には,統計資料によって潜在的稼働能力の推計を行うこともあります。また,どの程度の稼働能力があるかについては,権利者の就労歴や健康状態,子の年齢や健康状態等を考慮して判断されるべきですが,推計する場合は,パート就労者としての総収入を基準に推計する場合が多いようです。ただし,子が幼い場合に,現実に稼動していない権利者の潜在的稼働能力を推計することについては,慎重に検討する必要があるとされています。 (3)算定表の使用手順 算定表は,算定される養育費の額を,義務者がきわめて低収入の場合には1万円,それ以外の場合には2万円の幅を持たせて整理し,子の人数(0〜3人)と年齢(0−14歳と15歳〜19歳の2区分)に応じた9種類からなっています。そこで,算定表も9枚あります。 算定表の横軸には権利者の総収入(年収)が,縦軸には義務者の総収入(年収)がそれぞれ記載してあります。 この人数と年齢に従って使用する表を選択し,その表の権利者および義務者の収入欄を給与所得者か自営業者かの区別に従って選び出します。選んだ権利者の収入欄を上に,義務者の収入欄を右に伸ばし,両者が交差する欄の額が標準的な養育費の額を示しています。 (4)使用例 権利者(妻)と義務者(夫)に子どもが2人,その年齢が上の子が16歳,下の子が10歳のケースで,権利者が自営業者で年収(確定申告書の「課税される所得金額」)が前年度401万円,義務者が同様に750万円の場合,算定表3「養育費・子2人表(第1子15-19歳 第2子0〜14歳)」を選択し,この表の横軸の175の欄を伸ばした線と,縦軸の401万の欄を右横に伸ばした線の交点は,6〜8万円の枠内となります。 標準的な養育費はこの額の枠内であるので,当事者間の協議で,その枠内で具体的な額を定めることになります。 |
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| 3 注意点 算定表は,あくまで標準的な養育費を簡易迅速に算出することを目的とするものです。最終的な分担額は各事案の個別的要素をも考慮して定めることになります。 ただ,個別的事情といっても,通常の範囲のものには標準化するにあたって算定表の額の幅の中で既に考慮されており,この幅を越えるような額の算定を要する場合はこの算定表によることが著しく不公平となるような特別な事情がある場合に限られると考えられています。 |
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