| セクハラの定義 | |
| 質問 セクハラとはどのような行為を言うのですか。 回答概要 1 セクハラと一口に言っても,その概念の使われ方はさまざま。 セクハラと言われているものには,単にマナーの問題として,「それはセクハラだよ」っていう使い方と,民法上の『不法行為』として違法性のある行為に該当するものとしていう場合のセクハラ,名誉毀損など刑法上の問題にもなるセクハラのようなケースもあります。また,会社では,違法とまでは言えないけれども,経営・雇用管理の観点から看過することのできないものとしてのセクハラという使い方もあります。 弁護士として,アドバイスをしたりするのは,もっぱら民法上の不法行為としてのセクハラと,経営雇用管理上のセクハラですね。 なお,男性に対するセクハラもあり得ます。 被害者が男性であっても,民法上の不法行為が成立することになります。 2 雇用管理上のセクハラ (1) 対価型と環境型セクハラ 雇用管理の問題としてのセクハラは,職場における本人の意に反する性的言動をいいます。 セクハラには@対価型とA環境型があるとされます(厚労省もこの分類を前提にしています)。 (2) 対価型セクハラとは,意に反する性的言動について,拒絶したり抗議したことをもって不利益な処遇がなされるような場合をいいます。 他方,環境型セクハラとは,そのような報復的な仕打ちはないけれども,意に反する性的言動により職場環境が悪化しているという場合をいいます。 (3) 対価型セクシュアルハラスメント 環境型セクシュアルハラスメント 意に反する性的言動 詳しい解説 1 セクハラの定義 「セクハラ」のなかには,強姦(刑法177条)とか,強制わいせつ(刑法175条),名誉棄損(刑法230条)のような犯罪行為に該当すると考えられる場合もあれば,犯罪行為とまではいわないけれども民法上の『不法行為』として損害賠償請求の対象になる言動もあります。 また,法律問題の責任を発生させるような違法性のあるものとはいえないが,職場環境の問題として,経営・雇用管理上,会社が放置しておくことは不適当である言動であるという場合もあります。 そして,謝意一般のマナーとしてどうか,というような場合があります。 例えば,東京セクハラ事件というのがあります(東京地方裁判所判決平成10年10月26日)。 これは,宴会の席で上司に飲酒を強要されたうえ,二次会への出席を強要されるなどのセクハラがあったとして,女性が損害賠償請求を求めた事案です。 裁判所は,「本件宴会において原告に対して飲酒を勧めた行為や二次会に参加させようとした行為には,強引で不適切な面があったことは否定できないとしても,飲酒した宴会の席では行われがちであるという程度を越えて不法行為を構成するまでの違法性があったとはいえず」不法行為は成立しないとしました。 裁判所がいうように,マナーに反し不適切な行為であるとはいえますが,このようなトラブルに発展していることからしても職場管理の問題としても看過できないといえますが,民法上の違法行為とまではいえないという認定した事件でした。 このように,セクハラには段階があり,マナー問題から違法問題まであります。 2 性的言動 職場環境の問題として,女性が精神的に安定してと働ける職場をめざして雇用管理上どういった対応をすべきか,という観点からセクハラの定義を考えたいと思います。 まず,セクハラで問題となるのは,「性的言動」です。 均等法の通達及び告示(平成10年6月11日女発第168号,前掲告示第615号)は「性的な言動」を次のように定義しています。 まず告示615号では『「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。』とされています。 前掲通達(女発168号)では,概ね次のように説明されています。 せいてきなとは,性的な内容の発言および性的な行動を指し,@「性的な発言」には,性的な事実関係を尋ねること,性的な内容の情報を意図的に流布することのほか,性的冗談,からかい,食事・デート等への執拗な誘い,個人的な性的体験談を話すことなどが含まる。 A「性的な行動」には,性的な関係を強要すること,必要なく身体に触ること,わいせつな図画(ヌードポスター等)を配布,掲示することのほか,強制わいせつ行為,強姦等が含まれる。 さて,具体的な事案が,性的言動と言えるか,セクハラに該当するかどうかは,男女間,世代間の価値観の違い,個人差などがあるために,具体的な線引きは難しいといえます。 この判断基準について,通達(女発168号)は,セクハラが,男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であるとしています。 しかし,平均的とは何かということ自体がさらに判断困難な問題です。 また,セクハラについて雇用管理の問題として取り組むべきだというのは,職場における個人の尊厳や各人の人格的利益を尊重すべきだという考え方が根底にあるからです。 そうであれば,やはり,本人が当該セクハラ言動をどう受け止めているか,嫌がっているかどうかといった,本人の主観面が重視されるべきだと言えます。 3 対価型と環境型セクハラ 概要でも説明しましたように,セクハラには@対価型とA環境型があるとされます。 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下単に「均等法」と省略します。)の指針や告示(平成10年3月13日労働省告示第20号,平成18年厚労省告示第615号)によりますと,次のように定義されています(告示615号を引用します)。 『「対価型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労 働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者 が解雇、降格、減給等の不利益を受けることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。 イ 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること。 ロ 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること。 ハ 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること。』 対価型セクハラとは,性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるものを言うとされています。 例えば,性的関係を拒絶されて,腹いせに解雇したり人事考課を低くするような場合が対価型です。環境型は,そのような不利益処遇はないが,当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるものを言うとされています。 指針は,対価型の典型的な例として,次の例を挙げています。@事務所内において事業主が女性労働者に対して性的な関係を要求したが,拒否されたため,当該女性労働者を解雇すること。A出張中の車中において上司が女性労働者の腰,胸等に触ったが,抵抗されたため,当該女性労働者について不利益な配置転換をすること。B営業所内において事業主が日頃から女性労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが,抗議されたため,当該女性労働者を降格すること。 環境型セクハラについては,次のように説明されています(これも前掲引用です) 『「環境型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる労 働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。 イ 事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該 労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。 ロ 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ 継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。 ハ 労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないことと。』 4 「職場」における性的言動 均等法の指針および通達は,セクハラを「職場における性的言動」として定義しています。 そこで,いわゆるアフター・ファイブの飲み会などの場合,「職場」と言えるのかという問題がでてきます。 告示第615号は,『「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労 働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。 例えば、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、当該労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する。』としています。 通達は,勤務時間外の「宴会」等であっても,実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するが,その判断に当たっては,職務との関連性,参加者,参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行うとしています。 例えば,大阪セクハラ事件(大阪地方裁判所判決10年12月21日)は,従業員同士で飲みに行った二次会のカラオケルームで,女性社員に抱きついたりキスしようとしたりしたという事案について,会社にも使用者責任(民法715条)があるとして損害賠償を命じました(使用者責任とは,抱きついた社員の不法行為が成立することを前提にして,会社にも責任があるということ)。 裁判例は,業務との関連性があれば,職場外の行為についても責任を認めるものといえます。 そこで,会社・経営者としては,職場に限定することなく,広く職場外の行為についても,同僚や部下,あるいは取引先の従業員等に対するセクハラの防止の啓発を図る必要があります。また,苦情や相談の申出がある場合には,職場外の行為であっても,同僚・部下など従業員同士のトラブルなのですから,真摯に耳を傾け誠意をもって対応することが必要です。 |
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